2014/11/16

「製作」と「制作」との違いとは?

普通にテレビのアニメーションを見ている人にはどうでも良いことかもしれませんが少なくとも出版やゲーム、映像や音楽などの業界とつながりを持ち、同業者ではないけれど知り合った友人たち、さらに専門学校の学生に時々質問されることがあります。ものすごーく気になるらしくて、曰く「○○製作委員会」って何?エンディングテロップに「制作スタジオ○○」「制作協力○○」「製作○○」って、いっぱい出てくるけど、あれって何?何か違うの?

アマチュアの人には難しいので知らなくて当然ですが、アニメ会社の新人も全然わからないといっていて、それはさすがにまずいのであえてここで説明をしたいと思います。ちなみに「衣(ころも)」があるほう?ないほう? と会話の中では使っています。

客単に、そして簡単に言ってしまうと「製作」はお金を出す人で、「制作」はお金をもらう人とまずは理解しておいてください。ただし、これは私が生きてきたアニメーション業界のことで、演劇とかテレビ局などではちょっと違う意味として使われ方をしています。別の言葉に置き換えると「作らせる人」と「作る人」になります。さらにこれを英語に置き換えると「PRODUCE」と「CREATE」になりますね。つまり、プロデューサーとクリエーターのことで、クリエーターはこの場合アニメーターということです。

ここでちょっと注意しなければいけないのは、アメリカと日本ではプロデューサーの意味合いが違います。日本においてプロデューサーは大半が雇われプロデューサーで、真の意味でのプロデュースをしているわけではなく、現実的には「制作」側に分類されてしまうような使われ方をしています。
アメリカなどではプロデューサーは個人でお金を出したり、いろいろなところからお金を集めてきたりして作品を誰かに作ってもらいます。その際に、企画はもちろん、監督を含めスタッフまで自分で決めてしまって、気に入らなければ監督でさえクビにしてしまうほどの権限を持っているのがプロデューサーです。会社の命令で作品を作るのではなく、個人意思と責任で作品を作るんですね。

アカデミーっ作品賞とかがあるのは、監督ではなくそういう人たちに送るためなのです。監督の才能よりもそういう作品を作ろうと思った人企画【プロデュース】した人を称賛しているわけです。もちろんアイディアだけではなく行動力があり実際に実行した人でなければいけませんが…

日本ではそこまでの財力と権力、指導力や先見性のある人が少ないうえに、体質的になじまないので「製作委員会」という集団プロデュースをとっています。「製作委員会」はアメリカでいう個人の仕事をみんなでやっているわけで、みんなといっても会社の連合だったり、いくつかの各社の担当者のことを言います。別の言い方をすれば、お金はあっても冒険や危険をおかすことなく、失敗の責任も個人でとらなくて済むので、ビジネス的には1つの方法論であって、ものすごく日本人らしいとも言えます。

「制作」と「製作」では見た目もこんなに違う?

アニメーション業界でも単純にお金だけではなく、その作品に対する権利とかを含めるともう少し製作と製作の区分は変わってきます。どんなに企画が良くてもお金がないと作品(商品)は作れませんよね。商品として作品を作るためにお金を出した人はある意味でその作品の持ち主ということになります(これが製作者ですね)。当然のように持ち主には様々な権利が発生してきます。グッズを作る権利、ゲームを作る権利、広告や宣伝に使う権利、DVDにする権利などなどたくさんあります。ホテルを貸し切っての製作発表会は世間的には宣伝のためもありますが、こういった権利の販売会といった側面のほうが正しいといえます。実際にゲーム化の権利はいくらという値段票が配られているのです
みなさんはDVDのパッケージとかグッズで©というまーくをみたことがありますか?業界的には「マルシー」と呼ばれています。いわゆるこれが権利を表す示すものです。©の後に会社名とかが入りますが、原作者がいたりとか「製作委員会」形式だと©3つや4つもついている場合もあります。
かたや制作は、実際にアニメーションを作っている会社、具体的に言うとアニメーターが作業をしている会社を指しています。厳しい見方をすると、漫画原作があったりする作品の場合、監督、作画監督、原画マンから動画マンにいたるまで、制作側は仕事以外にそのキャラクターを描くことはできません。それは©を持っていないというだけの理由からなのですが、例えアニメ版のキャラクターデザインをしていても、そのアニメーターは仕事以外にその作品に対しての権利がないのです。実際に落書きも禁止されている会社があったぐらいで、勝手に漫画やイラストを描いてコミケで販売するなんてもってのほかの違法行為になってしまうのです。
キャラクターデザインをしたといっても自分のものではないのですよ。その昔、手塚治虫の会社が倒産して版権までなくなしてしまい、自分の原作キャラクターなのに描けなくなってしまったというのは有名な話です。ただ製作側もそのアニメーターがいないと売れる作品が作れないので、持ちつ持たれつの関係というのはありますが……。微妙な言い方になってしまいますが、「制作会社」でもオリジナルの企画で©を持つと「製作会社」になるわけで、お金の出どころと権利の比率がどうなっているかで力関係は変わってきます。
そのため、体外の制作会社の社長は制作加害者にならずとも、常々自社の©作品を持ちたいと願っています。

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